京丸うちわ®
京都のお茶屋さんや料亭などに行くと、目に飛び込んでくる、芸妓さん、舞妓さんの名前の入った赤と白のデザインのうちわが飾ってあります。「京丸うちわ」は小丸屋を代表するうちわで、京都の歴史や文化の深さを感じさせます。あなたもご自身の名入れうちわをつくってみてはいかがでしょうか。
京丸うちわは小丸屋住井の登録商標です。
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小丸屋と花街の繋がり
白い和紙のうちわの表面に、濃い朱色で記されているのは、京都の五花街と呼ばれる各お茶屋さんや芸妓さんの家紋です。そして裏面には花街の名前と、そこに所属する芸妓さん、舞妓さんの芸名が入ります。明治五年以降、京都の花街では芸舞妓の名前の入ったうちわをお世話になった方々に配ることが習慣となっていきました。このうちわは京都の「京」と小丸屋の「丸」をつけて「京丸うちわ」と名付けられ、現在に至ります。
250人近い芸舞妓が、ひとり100本以上、多ければ200本ものうちわを注文されます。それを受注した小丸屋は、文字を起こし、型にして、地紙に名前と紋が印字されます。2月頃になると、竹の骨に地紙を貼り始め、それが一気に納品されるのが6月10日頃。お茶屋さんに納品されたうちわは、お茶屋さん、料亭、飲食店やバーなどに配布され、飾られます。芸舞妓はこのうちわで自分の名前を売り、飲食店は華やかな京丸うちわを飾ることで、自分の店に芸舞妓が出入りしていることを示すことができます。贈る方も受け取る方も互いに役に立つ。京都の花街の文化が、この京丸うちわには込められており、それが京都の街の中に季節感を伝えながら鮮やかに浸透していくわけです。
京丸うちわに込められた技
京丸うちわは、持ち手の柄の部分と骨の部分が一体の竹で作られています。全体から感じる美しさを支えているのが、素材の無駄のない、一本の竹材から作り上げる職人の技術です。直径10センチ程に育った3~4年目の伐採された竹を筒に切ります。筒の全長は約40センチ。上から25センチ、下から15センチくらいの部分に節があるように切ります。この筒を縦に裂くことで、うちわの骨を7本分程度取ることができます。この時に出た余りは、あとで「カマ」(うちわの下半分丸みの部分)と呼ばれる顎の部分に利用されます。竹は水に漬けて柔らかくし、竹の節から上の長い方(骨になる部分)25センチ分を二つに裂き、それぞれ厚みが均等になるように内側を削ります。そうすることで40本以上ある骨の厚みが均等になるわけです。小丸屋ではこの工程を今もきちんと守っていますが、こうした細かい手間を省かないことで仕上がりの印象は大きく変わってきます。
京丸うちわに使われる独特の朱色は、昔は顔料の朱色ににかわを混ぜ、墨の色を足して作っていました。今では専用の色を作り、活版で印刷しています。なんともいえない味のある色合いは、京の伝統を彩る要素になっています。
仕上げの工程では「住井製」の商標の入った柄巻を柄の上に貼り、そして「装束」と呼ばれる朱色の松茸のような形の紙を貼ります。小丸屋の京丸うちわには、紋の入っている表側の柄のところに黒い焦げのような印が二つ入っています。これは小丸屋がこのうちわを作ったという印で、江戸時代から入れられています。これは墨を塗っているのではなく、希釈した希硫酸を筆につけて柄の部分に「ポンポン」と載せてから、竹を炭火で焼くと、茶色く焦げたような印になります。小丸屋の誇りが詰まったものなのです。